Windows 11でWeb開発やJavaScriptの学習を始める際、最初にして最大の壁となるのが「Node.jsの環境構築」です。
結論から申し上げますと、Node.js公式サイトからインストーラーを直接ダウンロードしてはいけません。
なぜなら、開発現場ではプロジェクトごとに異なるバージョンのNode.jsを使い分けることが当たり前であり、直接インストールしてしまうと後々のバージョン管理で必ず行き詰まるからです。
そこで必須となるツールが、今回解説する「nvm-windows(Node Version Manager for Windows)」です。
この記事では、プロのWeb開発現場で標準的に採用されている「nvm-windows」を使用したNode.jsのインストール方法を、Windows 11向けに特化して徹底解説します。
初心者の方がつまづきやすいPowerShellの権限設定や、環境変数のトラブルシューティングまで網羅していますので、この記事通りに進めれば、将来にわたって困らない「最強の開発環境」が手に入ります。
なぜWindows 11では「nvm-windows」が必要なのか?
Node.jsのインストール方法はいくつか存在しますが、Windows環境においては「nvm-windows」の利用がベストプラクティス(最善手)とされています。
その理由を深く理解することで、今後の開発効率が劇的に変わります。
複数のプロジェクトを同時に進行できる
Web開発の現場では、「Aという案件はNode.js v18で動いているが、Bという新規案件は最新のv22を使いたい」という状況が日常茶飯事です。
もし公式サイトのインストーラーで直接Node.jsを入れていると、案件を切り替えるたびにアンインストールと再インストールを繰り返すことになります。
nvm-windowsを使えば、コマンド一つで瞬時にバージョンを切り替えることが可能です。
これは、時間の節約だけでなく、依存関係による予期せぬエラーを防ぐためにも不可欠な機能です。
チーム開発でのバージョン不整合を防ぐ
チーム開発では、メンバー全員が同じバージョンのNode.jsを使用することが絶対条件です。
「自分のPCでは動くのに、同僚のPCでは動かない」というエラーの多くは、Node.jsのバージョン不一致が原因です。
nvm-windowsを導入していれば、nvm use <バージョン>と打つだけで、チームで指定された環境を即座に再現できます。
アンインストールやアップグレードが安全
Node.jsは頻繁にアップデートが行われます。
直接インストールしている場合、アップデート時に古いファイルが残留して環境が汚れることがありますが、nvm-windowsはフォルダごとにバージョンを隔離して管理するため、PCの環境を常にクリーンに保つことができます。
以下に、主要なNode.js導入方法の比較表を作成しました。
【表1:WindowsにおけるNode.js導入方法の比較】
| 導入方法 | 推奨度 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| nvm-windows | ◎ (最高) | バージョン切り替えが容易。 Windowsネイティブで動作し軽量。 設定がシンプル。 |
初回セットアップにコマンド操作が必要。 古いNodeが残っていると競合する。 |
| 公式サイト (直) | × (非推奨) | クリックだけで入るため最も簡単。 初心者には直感的。 |
バージョン切り替えが困難。 権限エラーが起きやすい。 環境が汚れやすい。 |
| WSL2 (Ubuntu) | 〇 (中級者向) | Linux環境と完全に同じ挙動。 Dockerとの相性が良い。 |
Linuxの知識が必要。 ファイルアクセス速度の問題がある。 メモリ消費が多い。 |
| Docker | △ (特定用途) | 環境をコンテナに閉じ込められる。 PCを汚さない。 |
エディタ設定が複雑になる。 学習コストが高い。 単純なスクリプト実行には重すぎる。 |
これからWeb開発を本格的に学ぶのであれば、迷わずnvm-windowsを選択してください。
Step 1:既存のNode.jsを完全に削除する(最重要)
nvm-windowsをインストールする前に、必ず行わなければならない作業があります。
それは、「既にインストールされているNode.jsを完全に削除すること」です。
もし過去に公式サイトからNode.jsをインストールしたことがある場合、それが残ったままnvm-windowsを入れると、パス(Path)が競合して正常に動作しません。
これは初心者が最も陥りやすい罠ですので、以下の手順で確実にクリーンアップを行いましょう。
1. アプリの設定からアンインストール
まず、Windowsの「設定」を開きます。
「アプリ」→「インストールされているアプリ」へと進みます。
検索窓に「Node」と入力し、「Node.js」が表示された場合は、右側の「…」をクリックしてアンインストールを実行してください。
もし何も表示されなければ、このステップはスキップして構いません。
2. 残留フォルダの削除確認
アンインストールを実行しても、設定ファイルやnpmのキャッシュが残っている場合があります。
エクスプローラーを開き、以下のフォルダが存在するか確認し、もしあればフォルダごと削除してください。
C:\Program Files\nodejsC:\Users\<あなたのユーザー名>\AppData\Roaming\npmC:\Users\<あなたのユーザー名>\AppData\Roaming\npm-cache
※ AppData フォルダは隠しフォルダになっていることがあります。
表示されない場合は、エクスプローラーの「表示」メニューから「隠しファイル」にチェックを入れてください。
これで、PCを受け入れる準備が整いました。
Step 2:nvm-windowsのダウンロードとインストール
それでは、nvm-windowsをインストールしていきます。
GitHubという開発プラットフォームからインストーラーをダウンロードしますが、手順は非常にシンプルですので安心してください。
1. インストーラーのダウンロード
Webブラウザで、以下のnvm-windows公式リリースページにアクセスします。
(検索エンジンで「nvm-windows releases」と検索してもアクセス可能です)
ページを少し下にスクロールすると、「Assets」という項目があります。
その中にある nvm-setup.exe をクリックしてダウンロードしてください。
zipファイルやソースコードもありますが、Windows 11ユーザーはexeファイルを使うのが最も確実です。
2. インストーラーの実行
ダウンロードした nvm-setup.exe をダブルクリックして起動します。
ユーザーアカウント制御(UAC)の警告が出た場合は、「はい」を選択して進めてください。
3. ライセンス契約の同意
セットアップウィザードが起動したら、「I accept the agreement」を選択し、「Next」をクリックします。
4. インストール先の選択
「Select Destination Location」という画面が表示されます。
デフォルトでは C:\Users\<ユーザー名>\AppData\Roaming\nvm になっています。
特に理由がなければ、このデフォルト設定のまま「Next」をクリックしてください。
フォルダパスに日本語(全角文字)やスペースが含まれていると不具合の原因になることがあるため、デフォルトの場所が推奨されます。
5. Node.jsのシンボリックリンク先の設定
次に「Set Node.js Symlink」という画面が表示されます。
これは、「現在有効にしているNode.jsのバージョン」をどこに配置するかという設定です。
デフォルトでは C:\Program Files\nodejs となっています。
ここも変更せずに、そのまま「Next」をクリックしてください。
この仕組みのおかげで、ツール側は常にこのパスを参照すればよく、裏側でnvmがバージョンを切り替えてくれるようになります。
6. インストールの完了
最後に「Install」ボタンをクリックすると、インストールが開始されます。
数秒で完了しますので、「Finish」をクリックしてウィザードを閉じてください。
これでnvm-windows自体のインストールは完了です。
Step 3:インストールの確認と初期設定
インストールが完了したら、正しく動作しているかを確認しましょう。
ここからは「ターミナル(PowerShell)」または「コマンドプロンプト」を使用します。
Windows 11では、「Windows Terminal」が標準搭載されていますので、これを使うのが便利です。
1. ターミナルの起動
スタートボタンを右クリックし、「ターミナル」または「ターミナル(管理者)」を選択します。
今後の操作で権限エラーを防ぐため、可能な限り「ターミナル(管理者)」で起動することをおすすめします。
2. nvmバージョンの確認
ターミナルが開いたら、以下のコマンドを入力してEnterキーを押してください。
nvm version
画面に 1.1.12 (またはその時点の最新バージョン)のような数字が表示されれば成功です。
もし「’nvm’ は、内部コマンドまたは外部コマンド…として認識されていません」と表示される場合は、インストールに失敗しているか、環境変数が反映されていません。
その場合は、一度PCを再起動してから再度試してみてください。
3. 利用可能なバージョンの確認
次に、インストール可能なNode.jsのバージョン一覧を確認してみましょう。
nvm list available
ずらりとバージョン番号のリストが表示されるはずです。
このリストには、「LTS」と書かれた列と、「Current」と書かれた列があります。
Web開発の現場では、基本的にLTS(Long Term Support:長期サポート版)を使用します。
LTSは動作が安定しており、長期間のセキュリティ更新が保証されているためです。
Step 4:Node.jsのインストールとバージョン切り替え
準備が整いましたので、いよいよNode.js本体をインストールします。
ここでは、最も一般的な「最新のLTS版」をインストールする手順を解説します。
1. 最新のLTSバージョンをインストール
以下のコマンドを入力してください。
nvm install lts
このコマンドを実行すると、自動的にその時点で最新のLTSバージョンがダウンロードされ、インストールされます。
もし特定のバージョン(例:v20.10.0)を指定したい場合は、以下のように入力します。
nvm install 20.10.0
ダウンロードには回線速度によって数分かかる場合がありますので、完了のメッセージが出るまで待ちましょう。
2. インストール済みバージョンの確認
インストールが終わったら、以下のコマンドでPCに入っているバージョンを確認します。
nvm list
インストールしたバージョン番号が表示されますが、この段階ではまだ「使用中」にはなっていません。
3. 使用するバージョンの有効化(重要)
Node.jsを使うためには、「このバージョンを使います」という宣言(有効化)が必要です。
先ほどインストールしたバージョン(例として20.11.0とします)を有効化するには、以下のコマンドを入力します。
nvm use 20.11.0
または、もっと簡単に以下のように打つこともできます。
nvm use lts
「Now using node v20.11.0 (64-bit)」のようなメッセージが表示されれば成功です。
この操作を行うことで、初めてWindowsがNode.jsを認識できるようになります。
4. 動作確認
最後に、Node.jsとnpm(Node Package Manager)が正しく認識されているか確認します。
以下の2つのコマンドを順番に実行してください。
node -v
npm -v
それぞれのバージョン番号が表示されれば、環境構築は完璧です。
【表2:よく使うnvmコマンド一覧】
| コマンド | 機能 | 使用例 |
|---|---|---|
nvm install lts |
最新の推奨版(LTS)をインストール | 環境構築の最初に実行 |
nvm install <version> |
指定したバージョンをインストール | nvm install 18.17.0 |
nvm use <version> |
使用するバージョンを切り替える | nvm use 18.17.0 |
nvm list |
インストール済みのバージョンを表示 | 現在どれが入っているか確認 |
nvm list available |
インストール可能なバージョン一覧を表示 | 新しいバージョンを探す時 |
nvm uninstall <version> |
指定したバージョンを削除 | nvm uninstall 16.0.0 |
nvm on |
nvmによる管理を有効化 | 何らかの理由で無効になった時 |
トラブルシューティング:Windows 11特有の落とし穴
Windows 11での環境構築において、多くのユーザーが直面するトラブルとその解決策をまとめました。
エラーが出た際は、ここを確認してください。
Q1. 「このシステムではスクリプトの実行が無効になっているため…」というエラーが出る
これはPowerShellのセキュリティ設定(実行ポリシー)が原因です。
Windows 11のデフォルト設定では、スクリプトの実行が制限されています。
解決策:
管理者権限でPowerShellを開き、以下のコマンドを実行して実行ポリシーを変更します。
Set-ExecutionPolicy RemoteSigned -Scope CurrentUser
確認メッセージが表示されたら、「Y」を入力してEnterを押してください。
これで、自分が作成したスクリプトや、信頼された署名のあるスクリプトが実行できるようになります。
Q2. nvm use を実行してもバージョンが切り替わらない(Access is denied)
「exit status 1: Access is denied.」や「exit status 5」というエラーが表示される場合です。
これは、nvmがシンボリックリンク(ショートカットのようなもの)を書き換えるための権限が不足している場合に発生します。
解決策:
必ずターミナル(またはコマンドプロンプト)を「管理者として実行」で起動してください。
管理者権限のターミナルで nvm use を実行すれば、問題なく切り替わります。
一度切り替えてしまえば、普段の作業は一般ユーザー権限のターミナルで行っても問題ありません。
Q3. 文字化けが発生する
nvm list available などを実行した際に、表示が崩れたり文字化けしたりすることがあります。
解決策:
これはシステムロケールやターミナルのフォント設定に依存する問題です。
機能的には問題ありませんが、見づらい場合はコマンドプロンプト(cmd.exe)を使用するか、Windows Terminalの設定でフォントを「Cascadia Code」や「Consolas」などの英字フォントに変更してみてください。
開発効率を上げるための追加設定
Node.jsのインストールは完了しましたが、実際の開発をスムーズに進めるために、パッケージマネージャーの整備も行っておきましょう。
npm以外のパッケージマネージャー(yarn, pnpm)の導入
Node.jsには標準で npm が付属していますが、開発現場ではより高速な yarn や pnpm が使われることも多いです。
これらを使用したい場合は、Corepackという機能を使うのが現代的な方法です。
Node.jsの新しいバージョンではCorepackが標準で含まれています。
以下のコマンドでCorepackを有効化するだけで、yarnやpnpmが使えるようになります。
corepack enable
これで、yarn install や pnpm install などのコマンドが使えるようになります。
別途インストーラーを使ってyarnを入れる必要はありません。
この方法はバージョン管理もしやすく、現在のWeb開発のスタンダードとなっています。
【表3:Node.jsバージョンの種類と選び方】
| バージョンタイプ | 概要 | 推奨ユーザー | 更新頻度 |
|---|---|---|---|
| LTS (推奨) | 長期サポート版。安定性が最優先され、企業の商用利用でも標準的に採用される。偶数番号(v18, v20, v22など)。 | 全ての開発者、初心者、実務利用 | 低い (安定重視) |
| Current (最新) | 最新機能がいち早く搭載される版。実験的な機能が含まれることがあり、LTSより安定性は劣る。奇数番号(v19, v21など)。 | ライブラリ開発者、新機能を試したい人 | 高い |
| Old Versions | サポートが終了した古いバージョン。セキュリティリスクがあるため、特別な理由がない限り使用しない。 | レガシーシステムの保守担当者 | 更新なし |
実践:Hello Worldを表示させてみよう
最後に、インストールしたNode.jsが正しくプログラムを実行できるかテストしてみましょう。
プログラミングの第一歩である「Hello World」を表示させます。
1. 作業用フォルダの作成
ドキュメントフォルダなど、好きな場所にテスト用のフォルダを作成します。
ターミナルで以下のコマンドを使うと早いです。
mkdir node-test
cd node-test
2. JavaScriptファイルの作成
メモ帳やVS Codeなどのエディタを開き、以下のコードを記述して app.js という名前で保存します。
console.log("Hello, Node.js on Windows 11!");
3. プログラムの実行
ターミナルで、先ほどファイルを作成したフォルダに移動していることを確認し、以下のコマンドを実行します。
node app.js
画面に Hello, Node.js on Windows 11! と表示されれば成功です。
おめでとうございます!
これであなたのPCは、Webサーバーを立ち上げたり、ReactやVue.jsなどのモダンなフレームワークを動かしたりできる、立派な開発マシンへと進化しました。
まとめ
Windows 11におけるNode.jsの環境構築について、nvm-windowsを用いた最も確実で管理しやすい方法を解説しました。
記事のポイントを改めて整理します。
- 直インストールはNG: 必ず
nvm-windowsを経由してインストールする。 - 既存環境の削除: 古いNode.jsが残っていると不具合の原因になるため、最初に完全に削除する。
- LTS版を選ぶ: 実務や学習には、安定した「LTS(長期サポート版)」を使用する。
- 権限に注意:
nvm useなどの設定変更コマンドは「管理者権限」で実行する。 - PowerShellのポリシー: スクリプト実行エラーが出たら
Set-ExecutionPolicyを確認する。
環境構築は、Web開発の最初の難関ですが、ここを正しく乗り越えれば、その後の学習や開発スピードは飛躍的に向上します。
もし将来、新しいバージョンのNode.jsが必要になっても、あなたはもう恐れることはありません。
nvm install と nvm use だけで、自由に環境をコントロールできるからです。
さあ、整った環境で、最高のJavaScriptライフをスタートさせましょう。

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