執筆者プロフィール:橋本(Hashimoto)/ネットワーク・インフラ構造家
ネットワーク構築・保守歴18年。数多くの中小企業でWindows 10/11へのリプレースプロジェクトを完遂。古いNASやレガシーシステムが混在する現場で「今すぐ動かしたい」という切実な声に応え続けてきた、インフラ復旧のスペシャリスト。
「新しいPCにした途端、昨日まで普通に使えていたNASのデータが開けなくなった……」。
事務所のPCをWindows 11に新調したばかりの佐藤さん、今まさにそんな状況で焦っていませんか?
共有フォルダを開こうとしても、「ネットワークパスが見つかりません(エラーコード:0x80070035など)」という無機質なエラーが出る。
上司からは「データの移行はどうなった?」と催促され、自分のPCが初期不良なのか、それともSMB 1.0の有効化設定ミスなのか分からず、背中に冷たい汗をかく感覚。
現場で佐藤さんのような方から、「Windows 10の時は普通に使えたのに、なぜ最新の11でできなくなるんだ!」と半分怒り混じりの相談を何度も受けてきました。
実は、これには明確な理由があります。
Windows 11は、古いNASが通信に使う「SMB 1.0」という古い規格を、セキュリティのために最初から「オフ」にしているからです。
本記事では、18年の現場経験を持つ私、橋本が、SMB 1.0を有効化する最短の手順を解説します。
さらに、ネット上の多くの記事が触れていない「SMB 1.0を有効化したのにまだ繋がらない」時の最後の壁——Windows 11特有の「ゲストアクセス制限」を突破する方法まで網羅してお伝えします。
この記事を読み終える頃には、佐藤さんのPCから無事にNASのファイルが開けるようになっているはずです。
なぜWindows 11で突然NASが見えなくなったのか?(SMB 1.0とセキュリティの関係)
「なぜ、わざわざ使える機能をオフにするんだ?」と疑問に思うかもしれません。
しかし、これには世界を震撼させた大きな事件が関係しています。
結論から言うと、Windows 11は佐藤さんのPCを守るために、あえて古いNASとの通信手段(SMB 1.0)を遮断しているのです。
SMB 1.0は、30年以上前に作られた非常に古い通信プロトコルです。
実は、2017年に世界中で猛威を振るったランサムウェア「WannaCry」は、このSMB 1.0の脆弱性を突いて感染を広げました。
この一件以来、Microsoftは「SMB 1.0は危険なもの」と定義し、最新のWindows 11では標準でインストールすらしない、あるいは無効化するという断固たる措置をとっています。
つまり、最新で安全な「Windows 11」と、古くて脆い通信規格しか話せない「古いNAS」の間で、言葉が通じなくなっている状態なのです。
佐藤さんのPCが壊れたわけではありません。
ただ、安全のために閉じられた扉を、あえて「手動で」開けてあげる必要があるのです。
ただし、将来のバージョン(2026年現在の主流である24H2以降など)ではこの機能自体が完全に削除される流れにあります。
今回の対処はあくまで「今のうちにデータを救出するための暫定処置」と考えてください。
【図解】SMB 1.0を有効化する最短の手順(まずはここから)
それでは、まずは基本となるSMB 1.0の有効化手順を進めましょう。
コントロールパネルの奥深くにある設定を呼び出します。
ステップ1:SMB 1.0の有効化設定画面を呼び出す
1. タスクバーの検索窓に「control」と入力し、コントロールパネルを開きます。
2. 「プログラム」>「**Windowsの機能の有効化または無効化**」をクリックします。
ステップ2:SMB 1.0にチェックを入れる
1. リストの中から「**SMB 1.0/CIFS ファイル共有のサポート**」を探します。
2. 左側の「+」を押して展開し、以下の3つすべてにチェックが入っていることを確認してください。
- SMB 1.0/CIFS クライアント
- SMB 1.0/CIFS サーバー
- SMB 1.0/CIFS 自動削除(※環境により異なりますが、クライアントは必須です)
3. 「OK」を押し、インストールが完了したら必ずPCを再起動してください。
※再起動をしないと、設定は1ミリも反映されません。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: SMB 1.0の有効化設定画面でチェックを入れた後、面倒でも必ず「再起動」を行ってください。
なぜなら、Windowsのシステム基盤に関わるこの設定は、OSが立ち上がり直すタイミングで初めて有効になるからです。
現場では「SMB 1.0の有効化設定を終えたのに反映されない」と嘆く方の半分以上が、再起動をせずに接続テストをしてしまっています。まずは再起動、これが鉄則です。
【重要】SMB 1.0を有効化したのに繋がらない?Win11特有の「ゲストアクセス制限」を突破する方法
さて、ここからが本題です。
実はSMB 1.0を有効にしただけでは、Windows 11から古いNASに繋がらないケースが多発しています。
その原因は、Windows 11が持つもう一つのセキュリティ機能、「不安全なゲストログオンの禁止」にあります。
古いNASの多くは、ユーザー名やパスワードを指定せずに誰でもアクセスできる「ゲストアクセス」を利用して共有フォルダを見せています。
しかし、Windows 11は、「パスワードのない通信は危険」と判断し、SMB 1.0が有効であっても接続を自動的にブロックしてしまいます。
ゲストアクセス制限の解除設定を行うには、Windowsの「エディション」に合わせた操作が必要です。
| 項目 | Windows 11 Pro / Enterprise | Windows 11 Home |
|---|---|---|
| 使用ツール | グループポリシーエディター | レジストリエディター |
| 設定項目名 | 不安全なゲストログオンを有効にする | AllowInsecureGuestAuth |
Windows 11 Proでの解除手順
1. `Win` + `R` キーを押し、「**gpedit.msc**」と入力して実行します。
2. 「コンピューターの構成」>「管理用テンプレート」>「ネットワーク」>「Lanman ワークステーション」と進みます。
3. 「**不安全なゲストログオンを有効にする**」をダブルクリックし、「**有効**」にチェックして保存します。
Windows 11 Homeでの解除手順
1. `Win` + `R` キーを押し、「**regedit**」と入力して実行します。
2. `HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Policies\Microsoft\Windows\LanmanWorkstation` を開きます。
3. 右側の空白を右クリックし、「新規」>「DWORD (32ビット) 値」を作成。名前を「**AllowInsecureGuestAuth**」にします。
4. 作成した値をダブルクリックし、データを「**1**」に変更してOKを押します。
これで、Windows 11から古いNAS(LinkStation、LANDISK等)への通信を遮るすべての壁が取り払われました。
セキュリティの不安を解消:有効化したSMB 1.0を安全に使い続けるための3つの約束
ここまで読んで「繋がった!良かった!」と安心している佐藤さんに、プロとして一つだけお伝えしなければならないことがあります。
冒頭でお伝えした通り、SMB 1.0は脆弱な規格です。
SMB 1.0という通信規格を有効化したままにするということは、佐藤さんのPCに「1970年代の古い鍵」を取り付けたようなものです。
安全に使い続けるために、以下の3つを約束してください。
1. NASのバックアップを必ず別の場所に取る: 古いNAS自体がいつ壊れてもおかしくありません。
2. 不必要な時はSMB 1.0の有効化設定をOFFに戻す: NASからデータを抜き出し終わったら、再度チェックを外すのが最も安全です。
3. NASの買い替え計画を立てる: SMB 2.0/3.0に対応した最新のNASなら、安全に高速通信ができます。
SMBv1 の使用は、自分の家を1970年代の鍵で守るようなものだ。もはや現代の脅威には耐えられない。Microsoftは SMBv1 の完全な廃止を強く推奨している。
出典: SMBv1 is not installed by default in Windows – Microsoft, 2023年
「ネットワークパスが見つからない」は怖くない。安全に業務を再開しよう
お疲れ様でした。これで無事にNASの共有フォルダが開けるようになったはずです。
Windows 11への移行は、単に見た目が変わるだけでなく、目に見えないセキュリティの強化がたくさん行われています。
今回のSMB 1.0の有効化設定とゲストアクセス制限の解除設定は、その強化された壁を、利便性のために一時的に下げたに過ぎません。
まずは今日、止まっていた仕事を再開させてください。
そして一息ついたら、ぜひ「より安全な最新のNASへの買い替え」を検討してみてください。
それが、佐藤さんの大切なデータと仕事を本当の意味で守ることにつながります。
もし、これでも繋がらないという場合は、Windowsの『資格情報マネージャー』に古いパスワードが残っていないか確認した上で、NAS側の設定画面でSMB 1.0通信が許可されているかも念のため確認した上で、NAS側の「IPアドレス」を直接入力してアクセス(例:`\\192.168.x.x`)してみてください。
(※IPアドレスが分からない場合は、NASメーカーが提供している『検索ツール』を使うとすぐに見つかります)。
佐藤さんの仕事が、今日からまたスムーズに進むことを願っています!
【参考文献リスト】
- SMB1.0/CIFSのサポートについて – Microsoft 公式
- WannaCryの脅威とSMBv1の脆弱性解説 – トレンドマイクロ
- Windows 11でNASにアクセスできない場合の対処法 – バッファロー公式FAQ



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